番外編 護衛艦せとぎり

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函館貧乏観光 番外編 第5弾
護衛艦せとぎり


※2016年8月の取材ネタですが、よろしかったらご覧下さい。

護衛艦せとぎり  2016年8月3日、4日函館港町埠頭にて、護衛艦「せとぎり」が一般公開されました。
例年、函館港まつり期間に海上自衛隊の艦艇が来港してくれるのです。個人的には港まつりの「花火」や「パレード」より、こちらのほうが楽しみです。

では、手荷物検査を受けて「せとぎり」に乗艦します。
護衛艦せとぎり  まずは艦橋に上る列に並びます。「せとぎり」は平成2年、「あさぎり」型護衛艦6番艦として就役。
以下、「せとぎり」主要性能。
 基準排水量  3,500トン
 全長  137m
 最大幅  14.6m
 喫水  4.5m
 馬力  54,000PS
 主機械  ガスタービン4基2軸
 乗員  約220名
 速力  30ノット(時速約56キロ)
チャフランチャー   艦橋へ上がる途中でチャフランチャーを発見。

Mk36 MOD1 チャフランチャー

ミサイル攻撃を受けた場合、アルミ箔片を詰めたチャフ弾を発射。空中に散布させたアルミ箔片がミサイルのレーダー波を撹乱し、ミサイルを回避する。
CIWS MK-15MOD12 高性能20ミリ機関砲
CIWS MK-15MOD12

20mmAPDS弾(下図)を使用。
弾頭部分はサポット、弾丸、プッシャーからなる。
発射時にプッシャーが高い初速と回転を、サボットが直進安定性を与える。そして弾丸は重金属のタングステンを用いることで高い貫通力と破壊力をもたらす。

20mmAPDS弾
護衛艦せとぎり 露天艦橋から前甲板を眺める。

せとぎりは1990年就役のベテラン艦で、多くの重要な任務に関わってきた。
代表的なものとしては、2002年にインド洋で米艦船等への洋上補給支援活動のために補給艦「はまな」とともに派遣された。
2010年には海賊対処のため護衛艦「まきなみ」とともにソマリア沖アデン湾へ派遣、船団護衛の任務についた。2013年にも護衛艦「ありあけ」とともに再びソマリア沖へ派遣され、国際的な舞台で活躍してきた。

祖国から遠く離れた過酷な環境のなかで、任務を果たしたせとぎりと乗員の皆様に、この場を借りて心より敬意を表します。 
護衛艦せとぎり
記憶に新しいところでは、2016年6月9日未明、尖閣接続水域に中国海軍のジャンカイⅠ級フリゲート艦が侵入、尖閣諸島領海内へと接近した。付近で警戒中の「せとぎり」はこれに対応、警告を発し監視を続けた。しかし、中国艦はこれを無視して2時間近く航行を継続。結局は領海に入ることなく接続水域外へと出ていったが、一触即発の状況だった。

その時この艦橋内で、そのような重大な事態に直面していたのかと思うと、こちらも緊張を覚えます。

護衛艦せとぎり  左写真は操舵装置。

※ ↑ 船乗りチャレンジ(番外編3)に失敗した人
護衛艦せとぎり  
左写真は速度制御盤。
74式アスロック8連装発射機  さて、艦橋から甲板に来ました。

74式アスロック8連装発射機を斜め後ろから鑑賞。

今回動作展示はありませんでしたが、実はこの発射機はごついボディのわりに身のこなしが軽快なのです。

護衛艦せとぎり 今度は前方から。
全扉開放一列上向き姿勢。
この躍動的なポーズ、それでいて重厚感ある佇まいには惚れ惚れします。
内部はどうなっているのか覗いてみたいけど、脚立が必要ですね。

62口径76ミリ単装速射砲  62口径76ミリ単装速射砲

対空対艦両用。
開発はイタリアのオート・メラーラ社。
アメリカ、日本、イギリス、インドなど世界40カ国以上が採用しているベストセラーです。
やるじゃん!イタリア。

ちなみに、日本製鋼所でライセンス生産しています。
76ミリ速射砲の砲弾  76ミリ速射砲の砲弾(模擬弾)

重さは12kg(薬莢は4kg)。


よく見ると「ダイキン工業」の印字が。
ダイキン工業といえばエアコンが思い浮かびますが、こういうものも作っていたんですね。
(実弾は中国化薬株式会社が製造)
護衛艦せとぎり  砲身付け根の下には薬きょう排出口あります。
護衛艦せとぎり  排出された薬莢はここにあたって甲板上に落下します。
68式3連装短魚雷発射管 68式3連装短魚雷発射管

アメリカのMk32短魚雷発射管を渡辺鉄工株式会社がライセンス生産しています。
渡辺鉄工は明治19年創業の老舗企業(社名は何回か変わります)。創業時は水揚げポンプを製作していましたが、大正期から日本海軍の水雷兵器を製造するようになり、昭和に入ると飛行機の製造も行うようになりました。太平洋戦争末期、実戦投入には間に合いませんでしたが、独特な形をした先尾翼式戦闘機「震電」を開発しました。現在は自動車用ホイール生産設備の製造が主力ですが、水上魚雷発射管メーカーとしては国内唯一です。
プローブレシーバー  プローブレシーバー(洋上給油装置)
洋上で補給艦からワイヤーを伝って伸びる給油ホースの先端部プローブをこれで受ける。並走しながら行うが、これは高度な操艦技術が必要となります。
シースパロー8連装発射機  艦尾甲板にはシースパロー8連装発射機
個艦防御用近接対空ミサイル。
自動装填装置(AMLS)で8発同時にミサイル装填ができます。

  
SH-60J対潜ヘリコプター ヘリコプター発着甲板に来ました。
写真はSH-60J対潜ヘリコプターです。
 主任務  対潜戦・対水上戦
 副次任務  捜索救難・通信中継・人員物資輸送
全長 19.76m
高さ 5.18
幅  2.36
重さ 10.7t
速度 130kt(約260km/h)
定員 3~8名
SH-60J対潜ヘリコプター  SH-60Jは米国シコルスキー・エアクラフト社のSH-60Bを基にして開発されました。3号機からは三菱重工業がライセンス生産をしています。製造価格は約50億円。1991年から配備され、2005までに103機が生産されました。
現在は後継のSH-60Kに順次切替中ですが、予算不足のため切替機数が限られており、J型は機体寿命を迎えても延命措置により運用されています。

SH-60J対潜ヘリコプター  コクピットの計器類。
これでもかというくらいにボタンがたくさんある。
SH-60J対潜ヘリコプター  FLIR(赤外線探知装置)
Forward Looking Infra-Red

これで暗闇でも見えるぜ。
SH-60J対潜ヘリコプター  MAD(磁気探知装置
Magnetic Anomaly Detector

磁場の乱れから潜水艦を見つけ出す。
使用の際はワイヤーで空中曳航されます。
探知範囲は約500m。
SH-60J対潜ヘリコプター  CMD(チャフ/フレア射出装置)
Counter Measure Dispenser

これは機体の左右に付いていますが
右側はチャフのみ、左側はチャフ用とフレア用が付いています。

チャフは前述のとおりレーダー誘導のミサイル対して有効でしたが、フレアは赤外線誘導ミサイルを回避するためのものです。空中に燃焼した金属粉末を放出することで、ミサイルを自機からフレアのほうに逸らすことができます。
護衛艦せとぎり  艦を降りると、立入検査隊の方々がいらっしゃって、
手錠、警棒、トランシーバーなどの装備品を展示していました。



楽しい時間はあっという間です。
今回はこれでおしまいです。
海上自衛隊の皆様ありがとうございました!