番外編 掃海艦あわじ&掃海艇はつしま

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函館貧乏観光 番外編 第8弾
掃海艦あわじ&掃海艇はつしま


超久しぶりの更新となります。
わたくし、貧乏に拍車がかかって生活に追われまして、なかなか更新できませんでした。
これから、溜まった過去ネタを徐々にアップしていきたいと思います。
今回は2017年8月の取材ネタです。古いネタですが、よろしかったらご覧下さい。

掃海艦あわじ

2017年8月4・5日、函館港町埠頭で掃海艦「あわじ」と掃海艇「はつしま」の一般公開が行われました。

 「あわじ」はあわじ型掃海艦の1番艦として2017年3月に就役。掃海隊群第1掃海隊(横須賀)所属。船体はFRP(グラスファイバー)を採用。
建造は100隻以上の掃海艦艇建造実績があるジャパンマリンユナイテッド。
艦名は兵庫県淡路島に由来。掃海艦艇名は島や海峡から選ばれるのが慣例。この艦は3代目「あわじ」。初代は昭和19年1月旧帝国海軍御蔵型海防艦3番艦として就役、同6月に船団護衛中に米潜水艦ギターロの雷撃により沈没。2代目は戦後、たかみ型掃海艇5番艇として昭和46年に就役、平成5年に除籍。
 「あわじ」主要性能 
基準排水量  690トン 
全長   66.8m
 最大幅  11m
 喫水  2.7m
 馬力  2,200PS
 機関 ディーゼルエンジン2機
 乗員  約54名
 速力  約14ノット

掃海
・・・それは海に仕掛けられた強力な破壊力をもつ兵器『機雷』を除去または無力化するための任務。
掃海艇は敵に砲撃したり、対艦、対空ミサイルをぶっ放したりというようなド派手な戦闘は行わない。
また、そのような装備もない。一般人から見ると花形の護衛艦とは違って、掃海艇は地味である。
地味ではあるが、海の戦いにおいて掃海は不可欠である。ひとたび海に機雷がばら撒かれたら、
どんな最新鋭のかっこいい艦艇も掃海部隊が海の掃除をしなければ、自由に航行できない。

   
まずは「あわじ」から見学します。 フロート(掃海浮標):展開器やワイヤーが海中に沈み込まないようにする『浮き』。
   
沈降器:係維掃海で切断器がついたワイヤーを一定深度に沈ませる道具。 発音体:船舶のエンジン音やスクリュー音を内蔵スピーカーで出すことが出来る。
上記の疑似音を出すことで、音響機雷を反応させて爆発処分する。
   
掃海電線巻揚機:黄色の電線を曳航→電流を流して磁気発生→磁気機雷を反応させて爆発処分。 係維掃海具巻揚機2型(正面)
 
係維掃海具巻揚機2型(斜めから)
 

写真上 ↑ MANTA機雷(写真は訓練用です)
MANTA機雷はイタリアのホワイトヘッド社が開発。台形のステルス形状に加え、外殻がFRPなので探知されにくい。敷設形態は沈底式、作動方式は感応式(音響または磁気式)。
 湾岸戦争後、海上自衛隊ペルシャ湾掃海派遣部隊はMANTA機雷をはじめ、ソ連製の触発機雷LUGM-145、沈底機雷UMD等の機雷に遭遇した。当時の掃海部隊には他国の海軍のような最新装備が揃ってなかったため、その処分に苦慮した。しかし、以後この実戦経験が教訓となり、装備や訓練を拡充し、世界屈指の掃海部隊へと一層の進化を遂げたのである。

  
 
 
敷設形態による分類
 
作動方式による分類
 
機雷の種類は様々。それに対する掃海方法もいろいろです。 

 
     
係維掃海 
上図のように係維機雷の機雷部分を繋いでいるワイヤーを切断する方法。「展開器」と「沈降器」で一定深度で左右に展開させる。曳航された掃海ワイヤーには複数の「切断器」がついていて、これにより機雷係維ワイヤーを切断し、機雷部分を水面に浮上させる。そして、機関砲による射撃でこれを破壊処分する。

 
 複合掃海 
上図のように「掃海電線」や「発音体」を使用することで船を模擬する方法。曳航された「掃海電線」により意図的に船の磁気を発生させる。さらに「発音体」により船のエンジン音やスクリュー音に似せた音を出す。これによって海中に仕掛けられた磁気機雷および音響機雷に『船(獲物)が来たな』と誤認させて、起爆処理する。

以上、掃海具を使用した『機雷掃海』方法でした。この方法で対処できない場合はソナーなどを使い、水中無人機や水中処分員で機雷を処分します。これを『機雷掃討』という。 
   
水中無人機 OZZ-2
プログラムによって海中を航行→サイドスキャンソナーで水中状況を調査→回収後に記録データの解析を行う。
艦首に行きます。


20mm機関砲(JM61R-MS)
機雷射撃処分時に使用。
発射速度 約600発/分
給弾方式 艦内給弾型
以下、前後左右の写真。

   
   
   
   
艦尾に進むとEOD員
EOD:Explosive Ordnance Disposal 爆発物処理班
動かない、これは・・・マネキンだな(^^;)
↑ゴムボート 処分艇ジェミニ・ディンギー(左)と4.9m複合作業艇(右)
   
ブリッジに来ました。
以下、逆光写真で申し訳ありません。
光学式監視装置操作部
   
20mm機関砲操作部 レーダー指示機
   
操艦・操舵部 掃海艦ソナーシステムOQQ-10情報表示コンソール
OQQ-10は可変深度式探知ソナー(VDS)で音波を発信して海底、海中の機雷を探知するシステム。
ブリッジ上の白いのがレーザー測距艤と赤外線カメラを組み合わせた電子光学式照準装置。
電子光学式照準装置拡大写真
前述の20mm機関砲と連動して正確な射撃に寄与する。
   
格納庫にやってまいりました。これは再圧タンク二人用です。潜水員が減圧症(潜水病)になったら、治療する装置。ストレッチャー部に潜水病患者が寝る。この部分をペイシェントルームという。

減圧症(潜水病)とは体内の血中に溶けている窒素が気泡化して血管をふさぐ→頭痛、吐き気、呼吸困難など身体に様々な悪影響をおよぼす。最悪の場合には麻痺が残ったり、死亡に至ります。
こちら側がテンダールーム。衛生員が入る部分。

<再圧タンクを使用した治療の流れ>
減圧症(潜水病)患者をタンクに入れる→加圧して海の中と同様の環境にする→血中の窒素を再度溶かす→ゆっくり減圧して血中の窒素を排出する。



   
こちらはテンダールーム内部。 テンダールームから見たペイシェントルーム内部。
   
爆発物処理班(水中処分員)潜水スーツ
水中処分員(EOD:Explosive Ordance Disposal diver)
主に水深50mまでの活動範囲の中で、機雷や不発弾などの爆発性危険物の捜索や処分が任務。
潜水器具
海上自衛隊潜水員は次の5つに区分されます。
・潜水特技員(開式スクーバ)
・潜水員(閉式スクーバ)
・深海潜水員(ヘリウム混合ガス使用)
・水中処分員(爆発物処理)
・飽和潜水員(深深度長時間潜水)
   
自走式機雷処分用弾薬(EMD)
水中機雷捜索・処分する「機雷掃討」の際に使用。カメラ、ソナーを搭載。光ファイバーケーブルで有線遠隔操作により、機雷に近づき成形炸薬弾頭を起爆させて機雷処分します。ちなみに使い捨てです。写真は訓練型(黄色)で、実弾は黒色です。
消火用具
艦内火災発生時に、乗員がこれらを用いて消火を行います。
防火衣:耐熱温度は1000℃。



掃海艇はつしま

次は『はつしま』に乗艇します。「あわじ」に長居してしまい公開終了時間が迫る。急ぎます!

この「はつしま」は、えのしま型掃海艇3番艇で平成27年3月就役。3代目の「はつしま」です。
船体はFRP(繊維強化プラスチック)製。耐用年数が木造艇の約1.5倍の30年となりました。
静岡県熱海市の『初島』から由来。初代「初島」は日本海軍最初の電纜敷設艇。1945年米潜水艦セネットの雷撃により沈没。2代目は1979-1995年就役。のち特務船として2001年まで在籍しました。
  「はつしま」主要性能 
基準排水量  570トン 
全長   60.0m
 最大幅  10.1m
 喫水  4.5m
 馬力  2,200PS
 機関 ディーゼルエンジン2機
 乗員  約48名
 速力  約14ノット
   
まずは艦橋内に。 光学式監視装置操作部
「あわじ」にもありましたね。
   
20mm機関砲管制盤
これも既視感。
レーダー指示器
 
左から電源監視制御装置、機関自動監視記録装置、自動操艦装置 
   
共通コンソール 航法支援装置
   
65式66cm測距儀
興和株式会社製。 あの胃腸薬の会社ですか?!
いつも胃がお世話になってます!
65式8cm双眼鏡(奥)と30cm信号探照灯(手前)
   
20ミリ遠隔管制機関砲 再圧タンク二人用(可搬式二人用再圧装置)
   
衛生用アンテナ 潜水スーツ
「適切な判断力、俊敏な行動力で任務を果たして必ず帰還」が水中処分員のモットー。
   
水中航走式機雷掃討具「S-10」(水中無人機)は海中で沈底機雷に爆雷を落としたり、カッターで係維式機雷のワイヤーを切断して機雷を処分する頼もしい奴。防衛省技術研究本部開発。
機体はFRP。機体後部に動力・信号伝達用の誘導電線をつなぐ。
 全長  3.4m
 全幅  1.8m
 重量  995kg
 潜航速度  4~5ノット
   
処分用爆雷庫
ここから爆雷を移送用台車に載せてS-10に取付ます。
S-10の登場で水中処分員が潜水作業中に爆発に巻き込まれたり、潜水病にかかるリスクが大幅に軽減された。ナイスS-10!もう見学終了時間がきてしまいましたので下艇します。
 
今回、世界屈指の実力を誇る掃海部隊の艦艇を見学し、掃海の奥深さを知ることができました。無知愚昧な私に親切丁寧にいろいろ説明して頂きまして、隊員の方々には感謝しております。本当にありがとうございました!